家づくりのために、土地を購入した方の話です。
今住んでいる家が築40年を越え、
「古くなったな・・・」と悩んでいた頃。
近所に分譲地が売り出されました。
建築条件付ですが、環境も価格も満足できるものだったので、
ご夫婦二人で話し合って購入しました。
それから数年。
今もそこに家は建てられていません。
周りの分譲地には次々と家が建っています。
なぜまだ家を建てていないのか?
答えは今の環境にありました。
隣近所に恵まれて、親戚のような親しい付き合いをしています。
親が留守の間、子どもは困った事があったら、ご近所に行きます。
親しすぎて、時には少し迷惑なこともあるけれど、
とてもあたたかい関係です。
家づくりをあれこれ考えていた奥様は、ふと気になりました。
「もし新しい家で、私が留守の間、子どもに何かあったら?」
今のご近所との関係が良すぎるだけに、新しい近所付き合いが不安です。
「お隣りさんと上手くやっていけなかったらどうしよう・・・」
奥様は、引越しをためらうようになりました。
ご主人も
「慌てて考えなくてもいいぞ」
と言ってくださいます。
買った土地に新築する可能性が低くなったので、
売ろうと思ったのですが、建築条件が付いているので売りにくく、
不況で土地は『底値』と言われるほど値下がりしお手上げ状況。
遊ばせておくのはもったいないということで、
奥様が野菜づくりに挑戦しています。
彼女は
「新築したいという気持ちが大きすぎて、
まわりが見えなくなっていたみたい。
今の家の古さばかりが気になっていた頃に分譲地が売り出されて、
本当に気に入って買ったんだけど・・・。
今の住まいの短所だけじゃなくて、長所もしっかり考えればよかった。
新しい家よりも、今のご近所関係の方が家族には大事だと、
後から気付いて・・・。
病気になったときに『健康っていいなぁ』って気付くのと同じ感覚かな?」
と言っていました。
今の土地を離れる、新しい近所付き合いが始まる、
と考えた時に、今のご近所の素晴らしさに改めて気づく事ができたそうです。
このご家族は、これからリフォームか建て替えを検討することはあっても、
別の土地に住む事は、もう想像できないそうです。
あなたが、もし、
「あ~、もうこんな住まいは嫌だ。早く新築したい」
と思っているなら、今の住まいの長所と短所を書き出してみませんか?
短所はポンポン出てくるでしょうが、
普段意識していない長所ってありますよね。
長所と短所をしっかり見つめて、
今の住まいに悔いが残らなかったら、
そして、資金計画などの充分な準備ができているのなら
建て時が来た、と考えていいでしょうね。
返品できない大きな大きな買い物ですから、
一時の『欲しい』に惑わされず、
今が本当に『その時』なのか、立ち止まって考える冷静さも必要ですね。